建築士が教える中古住宅の断熱リフォーム|費用を抑えて効果的に行うポイントは?



リフォームの打合せ

中古物件を購入したものの、「夏は熱くて、冬はとても寒い」と感じている方もいらっしゃると思います。実は、築年数の古い中古住宅の場合は、断熱リフォームが施されていないため、住み始めてから問題に気づく方が多いです。

今回の記事では、建築士等が複数在籍する弊社が、中古住宅における断熱リフォームのおすすめ箇所をご紹介します。同時に、費用を抑えて効率的に工事を行なう方法も記載しますので、ぜひ参考にしてください。


中古住宅は断熱リフォームを最優先で行うべき!

内装リフォーム
新築物件を建てるほどではありませんが、リフォームには多額の費用がかかります。限られた予算の中でリフォームを成功させるためには、優先順位を付けることがポイントとなります。

意外に思うかもしれませんが、中古住宅を購入した際に最優先で考えるべきなのは、実は、断熱リフォームです。それでは、その理由を詳しく解説していきます。


リフォームの優先順位を考えましょう

リフォームを考える時、まず多くの方が思い浮かべるのが、水回りです。前に住んでいた人のトイレやお風呂をそのまま使うのではなく、自分たち用に新しくしたくなりますよね。その気持ちは分かりますが、「何となく」リフォームをする箇所を考えてしまうと、予算内で満足のいくリフォームができない場合もあります。

だからこそ、リフォーム箇所は優先順位を付けるのが重要です。

優先順位は、「快適に暮らすためにはどういう家であるべきか」を考えてつけると良いでしょう。快適さは、日々の生活に直結するもので、家の「性能」に左右されます。

具体的には、「断熱性能」「耐震性能」「バリアフリー性能」の3つです。これらを優先してリフォームすることで、住み心地の良い住まいを手に入れられます。

その中でも日々の快適さや健康にも大きな影響を与えるのが「断熱性能」なので、優先順位を高めて考える必要があるのです。


なぜ断熱リフォームが最優先なのか

最優先で「断熱リフォームを行なうべきだ」と聞いて、「なるほど、そういうことか」と言える方はそう多くないでしょう。なぜなら断熱は光熱費が安く済むという印象が強いため、大多数の方が二の次にしてしまいがちな要素だからです。

では、断熱をおろそかにすると、どうなるでしょうか。

断熱がしっかりできていない家は、冬は寒く、夏はうだるように暑いです。見た目がいかにスタイリッシュだったとしても、寒暖差が激しく、体調を崩してしまうような空間には、長く住み続けることができません。逆に断熱性能が高い家では、年中快適で安定した暮らしを手に入れられます。

国土交通省が2014年度から進めてきた調査によれば、家の中が寒い場合や、部屋同士の気温差が大きい場合に、居住者のコレステロール値や血圧が高くなる傾向があると報告されています。つまり、断熱性能が高い家は、年中一定の温度が保たれるため、健康にも良い影響があるというわけです。将来にわたって長く住む家だからこそ、断熱リフォームを第一に考えてみてください。

※参照:国土交通省「断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告(第3回)



3種類の断熱リフォームと費用相場

断熱リフォームの重要性がわかったところで、その種類について解説します。断熱リフォームは「部分断熱リフォーム」「内断熱リフォーム」「外断熱リフォーム」の3種類があり、それぞれで施工内容と費用が異なるという特徴があります。

購入された中古物件の床面積や劣化具合、断熱材のグレードなどにもよりますが、一般的に、部分断熱リフォームが一番安く、次いで内断熱リフォーム、外断熱リフォームの順で施工費用が高くなります。ご予算に合わせて、最適な断熱リフォームを検討してください。


部分断熱リフォームの概要と費用相場

部分断熱リフォームとは、リビングやキッチン、洗面所・脱衣室、寝室といった、使用頻度が高い部屋だけに行なう断熱リフォームのことです。

断熱したい部屋の壁や天井裏、床下などに断熱材を入れる工事を施します。なお、キッチンを断熱リフォームする際は、設備の撤去に加えて部屋全体の壁を剥がす工程が加わるため、やや割高になりがちです。

メリットは部分的なリフォームで済むため、箇所を絞ればかなりの節約になる点です。一方で、施工をしていない空間は以前のままで、冬は寒く、夏は暑いというデメリットを解消できない点です。寒暖差が激しいと体力を消耗してしまいますので注意してください。部分断熱リフォームは、施工箇所をしっかりと見極めた上で行なうと良いでしょう。

費用相場は床面積の合計が15坪(約50㎡)で200~220万円程度になることが多いです。



内断熱リフォームの概要と費用相場

内断熱リフォームとは、外壁や床下、天井裏など、外気が通る全ての場所に断熱材を施すリフォームのことです。外気による家の温度変化を抑える機能が付与されるので、「部分断熱リフォーム」よりも、住まい全体の断熱性能が高くなります。

外壁に接する室内の壁を剥がしたり、屋根裏や床下に入ったりして、断熱材を施す工事を行います。内断熱リフォームを行なうことで、気密性も向上するので、隙間風の侵入も防げるようになります。

メリットは、物件全体を覆う断熱工事であるため、部屋同士の寒暖差が少なくなることです。身体的にも楽になりますし、「あっちもこっちも、エアコンを付けなければいけない」といった事態になりづらいというメリットもあります。デメリットは、部分断熱リフォームよりも工期が長く、スケジュール調整が難しいという点です。

費用相場は床面積の合計が25坪(約83㎡)で300万円程度になることが多いです。


外断熱リフォームの概要と費用相場

外断熱リフォームでは、屋根や外壁を覆うように、断熱性に優れた建材を貼り付け、住まい全体を断熱材で包み込む工事を行います。

メリットは、家全体を断熱材で包むことで、「部分断熱リフォーム」や「内断熱リフォーム」より高い気密性を保てるため、ハイレベルな断熱性を得られる点です。また、外観が新築のようにキレイに生まれ変わるのも嬉しいポイントです。

デメリットは、「部分断熱リフォーム」や「内断熱リフォーム」よりも難易度が高いため、高度な技術を求められる点が挙げられます。そのため、外断熱リフォームに不慣れな業者に依頼してしまうと、あまり断熱効果が向上しない場合があるでしょう。それどころか断熱材と建材の間に湿気が溜まり、住まいが傷みやすくなるケースも見られます。また、物件の上にビスを打つため、物件自体がもろくなっている場合は施工できないこともあります。

費用相場は床面積の合計が25坪(約83㎡)で500万円程度になることが多いです。


断熱効果が高い窓のリフォーム




「アレもコレも断熱って費用がかさんでしまって大変だ」という方に向けて、ここでは、効率良く断熱リフォームを行なう方法をご紹介します。実は家の中でも熱が移動しやすい場所と、そこまで大量に熱が移動しない場所が存在するのです。ずばり、家の中で最も熱が移動しやすいのは、「窓」です。窓をリフォームすることで高い断熱効果を得られるため、最初は窓の断熱から始めると良いでしょう。


「開口部」から熱が移動する

窓からの熱の出入りは、家を覆う外壁よりも多いことが分かっています。

一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会によると、夏に外から侵入してくる熱を100パーセントとした場合、窓などの開口部から入ってくる熱はなんと、約73%にもなるそうです。一方で、屋根からは11%、外壁からは7%、換気からは6%、床からは3%に過ぎません。冬場は、家の中の約58%の熱が窓などの開口部から外へ出ていきます。屋根からは5%、外壁からは15%、換気からは15%、床からは7%となっています。

参照:一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会ホームページ


上記の内容から、夏場は4分の3、冬場は2分1以上の熱が窓から出入りしているということが分かります。つまり、最も効果的に断熱効果を得たい場合は、窓の断熱リフォームを行なうべきなのです。費用を抑えたい場合は、手当たり次第に断熱材を施すのではなく、窓に絞ってリフォームを行なうと良いですね。


窓の断熱リフォーム箇所

窓の断熱を行う際には、何に気を付けるべきでしょうか。窓の断熱リフォームでは「サッシ」「ガラス」「内窓」という施工箇所があります。それぞれの箇所について、以下で解説していきます。


サッシの交換

サッシを交換することで断熱効果を高められます。交換の際は、枠ごと取り換えるため、隙間が生まれることがありません。アルミサッシから樹脂製のサッシに交換すると熱伝導率が1,000分の1になるため、断熱性能が高まります。その結果、結露が生じにくくなったり、防音効果が高まったりするメリットもあります。


ガラス

サッシではなくガラスだけを交換して、断熱効果を高める方法もあります。窓枠からガラスを外し、ペアガラスや複層ガラスなど断熱効果の高い素材をはめます。メリットは、サッシごと交換するよりも短時間かつ低コストで施工できる点です。

しかし、ガラス部分だけの交換となるため、アルミ製のサッシを使っている場合、断熱性能が不十分で、結露が発生する可能性があります。


内窓設置

すでに設置している窓のさらに内側に、もう1つ窓を取り付ける方法です。二重窓にすることで熱の移動を抑えることができるだけでなく、防音効果も期待できます。また、樹脂製の内窓にすると、さらに断熱性能がUP。枠の大きさやカラーも好きなものにできるため、デザイン性も高くなります。施工時間は1窓あたり1時間以内と短時間で終わりますし、費用も安く済みます。


断熱リフォームは条件を満たせば減税される

減税
断熱リフォームは200万円以上掛かると聞いて、断熱箇所を妥協しようと考えている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、諦めることはありませんので安心してください。特定の条件を満たして「増改築等工事証明書」を添付して確定申告を行えば、様々な減税が適用される制度があります。以下に、覚えておいて損のない、代表的な2つの減税パターンをご紹介するので、節約したい方はぜひ参考にしてください。


全ての部屋の窓を断熱リフォーム

一定の条件のもと、住まいに取り付けられた全ての窓に断熱フォームを行なうことで、減税の対象工事として認定されます。

減税対象になるには下記の条件を満たす必要があります。

・居住する床面積が50㎥以上の中古物件を購入する
・リフォーム用のローンを利用せずに、一括で代金を支払う

これによって「投資型減税」が適用され、翌年の所得税から最大25万円が減額されます。大きなコスト削減が実現できるため、条件が満たせそうな方はぜひ活用しましょう。


窓、床、天井、壁の断熱リフォーム

減税対象は、窓だけではありません。個別の断熱リフォームを行なう場合も、返済期間が5年以上のローンを組めば、「ローン型減税」「住宅ローン減税」などの適用対象になります。

「ローン型減税」は返済期間が5年以上のリフォーム用ローンを組んで、窓・天井・壁・床の断熱リフォームを実施すると適用されます。翌年以降の5年間で毎年最大12万5000円が所得税から減額されます。

「住宅ローン減税」は返済期間が10年以上のリフォーム用ローンを組んだ場合に適用されます。翌年以降の最長10年間にわたって、年末ローン残高の1%が、所得税から減額となります。

補助金や減税について、もっと詳しく知りたい方は、下記のページをご覧ください。

知っておかないと損をするかも・・・?リフォーム優遇制度



まとめ

限られた予算の中で行なう中古住宅のリフォーム。せっかく購入した家に長く住むためには、健康面にも良い影響を与える断熱リフォームを優先的に行なうのがオススメです。

中でも窓は熱の出入りが最も激しい場所なので、リフォームにおける最優先項目といっても過言ではありません。

内容によっては高度な技術が求められる断熱リフォームですが、弊社は一級建築士を始め、一級建築施工管理技士など高度な専門知識と技術を持つスタッフがいるため、安心してお任せください。

断熱リフォームについてのお問い合わせはこちら

 

シーエムシーについて

電話でお問い合わせ メールでのお問い合わせ

お役立ち情報

施工事例

お客様の声

イベント・セミナー情報

お問い合わせ